植物屋のこぼれ話(続編)その19フタゴヤシ バルメラヤシ by立花吉茂

 沖縄原産のヤシ科植物を調べていたら、昔ハイビスカスの調査に行ったインド洋方面の面白いヤシを思い出した。それはちょっとエッチで愉快な話題である。インド洋の中心部にあるセイシェル諸島のなかのプララン島にのみ生える珍果フタゴヤシ(双子椰子)とインド方面のパルメラヤシである。
 
●フタゴヤシ(ダブル・ココナッツ)
 雌雄異株で、成木は高さ30mにもなり、約25年で結実するが開花後熟するまで数年かかる。珍果といわれるのは食べておいしいだけでなく、その形がヤシの実を二つくっつけたようで、女性の腰の部分にそっくり、という点である。ふっくらとした凹凸と肝心なところはヘアーまで生えているという念の入りよう。雄花の房もまた男性のものにそっくり。保護地のトイレには雄花と果実を張り付けて男女がわかりようにしてあって、訪れる観光客をニヤニヤさせていた。

 このユーモラスな形から、このヤシにまつわる伝説も多い。アダムとイブの禁断の実はリンゴではなくこのヤシの実だとか、この島がアダムとイブの住家であったとか、たわいないものだが。古来インドでは精力剤として珍重されたといわれ、極めて高価なものであったらしい。今では国外持ち出し禁止。土産ものとしての販売は政府の専売、ちなみに果実1個2万円相当だった。私を案内してくれたお役人は、半熟のジェリー状態の果実を食べさせてくれて「世界最高額のゼリーだ」と言って笑った。
 
●バルメラヤシ(オオギヤシ)
 インドを中心にして広く分布する扇状の葉をつけるヤシで、アフリカにも分布する。雌雄異株で、果実は丸く、直径12~18cmほど、10個以上群がって着果する(図)。

インドの紀元前500年頃の神話ラーマーヤナのなかで、ラーマ神は奪われた妻のシータをしのび、このヤシの実を見るたびに妻の胸のふくらみを思い出した、と伝えている。シータは図のような立派なボインの持ち主であったに違いない。
 パルメラヤシは花序を傷つけ、流れ出る樹液をミルク代わりに飲んだり、煮詰めて砂糖にしたり、発酵させてヤシ酒も作る。このように有用な植物であるが、インドで聖木としてあがめられるのは、このヤシの葉を紙に加工し、経文を写したからであるといわれている。経文を書いたものは400~500年も保存がきき、そのような古文献が多く残っていて、今でも紙として使うところがあるらしい。このほか、葉柄からブラシ用の繊維を取り、小葉はマット、うちわ、帽子、バスケット、サンダルなどを編み、屋根葺き材料ともする。また長い幹に穴をあけて導水管としても重宝するという。
 このヤシの砂糖は上品な味で、コーヒーに入れてとてもおいしかったことを覚えている。
(『緑の地球』121号 2008年5月掲載)

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