インターン生によるインタビュー、「私の環境研究ことはじめ」。第12回は緑の地球ネットワーク(GEN)代表の前中久行さんにお話を伺いました。前中代表はこれまで名城大学や大阪府立大学(当時)などで造園学を専門に研究を続けてこられました。2011年からGEN代表を務めておられます。 GENのnoteでは、前中代表執筆の「植物についての雑エッセイ」を読むことができます。
今回は、前中代表のご専門である造園学を中心に、緑化を行う上で重要な考え方についてお話を伺いました。
公園・里山から考える、人と自然の関係
-公園は、環境を守る場としても機能しているのですか
環境としては当然役に立っていますが、それによって住民が我慢を強いられるのはどこかおかしいです。公園では、樹木そのものよりも樹木があることによって果たされる役割に価値があるわけですから、そこがいわゆる自然保護との違いだと思いますね。もちろん、植物や生態系を守ることも公園を作る一つの目的ではありますが、それが重視されるかはその公園の性格によるところが大きいです。ただ、公園という意味からすれば、人が利用することが前提の場所なので、厳格な自然保護を行いたいときは他の制度で行うべきです。そのあたりの制度があやふやなのが里山だと思います。
-里山のどのような部分で特にそう思われますか
里山は本来、人間が利用した結果として出来上がった場所だと私は考えています。昔は薪を取ったり、落ち葉をかいたり、炭を作ったりするために山を利用していました。その結果、林床に草花が咲いたり、鳥や虫がやってきたりする環境が生まれました。つまり、豊かな自然環境を作ること自体が目的だったのではなく、人間が生産活動の一環として山を利用した結果、環境的にも価値のある状態が生まれたのが本来の里山といえるでしょう。
-昔の里山と現在の里山保全には、どのような違いがありますか
昔の里山では、薪や炭など生活に必要なものを得るために山が利用されたことで生産活動が行われていました。しかし現在は、薪や炭の利用価値が低下し、里山環境を維持するためには人がお金や労力をかけて樹木を切る必要があるため、消費活動になっています。現在の里山環境は昔の里山利用とは本質的に異なってしまっているのです。本当に里山を復活させるのであれば、人が進んで利用したくなり、その結果として環境にも良い影響を与えるような、新しい利用方法を考える必要があります。
-人が山を利用しなくなると、森林はどうなるのでしょうか
江戸時代には、燃料として薪などを利用するために国内の森林が盛んに利用され、多くの山が樹木の少ないはげ山の状態になっていました。江戸時代末期の『摂河泉名所図会』というガイドブックのようなものに描かれた絵を見ると、ほとんどの山が、樹木が数本しか生えていない状態で描かれています。しかし鎖国が終わった明治時代以降、工業や交通機関が発達したことで海外から燃料や資材が入るようになると薪の需要が減り、森林が回復していきました。一方で、人の手が入らなくなったことによって森林の植生遷移も進んできました。例えば、1975年頃の生駒山地は落葉広葉樹林でしたが、落葉樹の下で日陰に強い常緑樹が成長し、次第に常緑広葉樹林へと変化しました。また飛鳥地域も同様に常緑広葉樹が育ったことにより、林床に十分な光が届かず林内が暗くなっていることに加え、見晴らしが悪い状態になってしまっています。このように森林の姿は、人間による利用の変化によって大きく変化します。
-見晴らしですか
樹木を植える意味の一つに見晴らしや眺望の改良がありますが、実際植える時にはそこまで考えられていないことも多いです。またこれは日本庭園の技法でよく使われるのですが、隠したいものが見えないように手前に樹木を植えて隠すことがあります。この場合、樹木には目隠し的役割が付与されています。他にも日本庭園の技法としてよく使われるものの中に遠近法があります。手前に大きな葉の植物を、奥に小さな葉の植物を置くことで遠近感が強調され、手前に枝がまばらな樹木を置くことで、枝の間から見える奥の景色がかすんで見えるため、奥の景色がさらに遠くにあるように感じさせることができます。ただこの遠近法は公園ではあまり使われません。本来広いところを広いまま活用することが公園の姿だからです。

緑化は目的から考える
-樹木はある意味万能だというイメージがありました
樹木を植えたら環境が良くなることはあるけど、それは百点満点ではありません。樹木を植えることによる様々な役割が相互的に働いてやっといい感じになるんです。暑さ改善効果を期待して屋上緑化を行うことはよくありますが、実際は植物そのものよりも日陰と水の蒸発による影響が大きく、植物に劇的な環境改善効果は無いことが分かっています。また、植物による日陰とひさしなどによる日陰では陰の部分に温度の違いはほとんどみられず、生きた芝生と死んだ芝生でも土が湿っている場合は温度の違いはほとんどみられませんでした。なので樹木を植えるというのはいろんな目的があるから植えるのであって、単純な目的のためにはそれ専用の方法を考えた方がいいな、と思いますね。
-緑化はそれ単体で良いものかと思っていました
「緑化は良いことだ」と考えられがちですが、期待しているほどの効果が得られないこともあります。また、樹木は残せばよいというものでもありません。狭い道路であれば、その道路の幅に合った大きさや種類の樹木を植える必要があります。何のために緑化するのかを考え、その目的や場所に適した方法を選ぶことが重要です。
インタビューを終えて
今回お話を伺った中で最も印象に残っているのは、植物を植えることが直接的に気温低下につながるわけではなく、植物が作り出す日陰による効果が大きいということです。もちろん考えてみれば植樹と気温低下が直接結びつかないのは当然のことなのですが、これまで私は樹木を植えることで二酸化炭素の吸収量が多くなるため、一時的にその場所の温室効果ガス量が減少し、温度が低くなると思っていました。もちろん、屋上緑化を行うのもその影響を狙っていると信じて疑っていませんでした。それが今回、暑さ改善には植物の有無より日陰と水の蒸発のほうが重要であるとお聞きし、衝撃を受けました。
今回のインタビューを通して、植物がなぜそこにあり、どのような役割・目的を持っているかを考えることの大切さを学びました。これから公園や森林、街路樹などを見るときには、「なぜここにこの樹木があるのだろう」「この緑は人や環境にどのような役割を果たしているのだろう」という視点を持ってみたいと思います。







