私の環境研究ことはじめ#10 植生から読み解く自然と人とのつながり(インターン生 佐保田えれな)2/2

 インターン生によるインタビュー、「私の環境研究ことはじめ」。第10回は武田義明さんにお話をお伺いします。
 武田さんは、神戸大学で教鞭をとられ、現在は吹田市・紫金山公園で活動する紫金山みどりの会や神戸市・東お多福山で活動する東お多福山草原保全・再生研究会の代表として、里山保全活動に尽力されています。

目次

GENとの関わり

-武田先生がGENを知ったきっかけはなんでしたか
 GENが主催していた中国での張家口探鳥ツアーが面白そうだと思い、参加したことがきっかけです。鳥にはあまり詳しくなかったので、観察中は鳥よりも植物の方をよく見ていたのですが、張家口市蔚県では、日本では見られない植物や、日本の北方で見られる植物に似た植物が見られました。林が少ないため植物は多くないのではないかと思っていたのですが、残っているところには多様な植物が生育しており、非常に興味深かったです。

コイカル

 中国には、ほとんど開発されて植生が失われた地域もあれば、険しい地形など利用しにくい場所では多様な植物が残っている地域もあります。人間の利用が進んだ場所では原生的な植生は残りにくい一方、利用が入りにくい環境では多様性が維持されていることが分かり、その対比が非常に興味深いと感じました。

-訪問された中国・黄土高原と日本の森林の一番大きな違いは何だと思われますか
 中国・黄土高原では、植物や森林の利用といった土地利用がかなり激しいという印象を受けました。過度な利用によって植生が荒廃してしまった場所もあると考えられます。雨が多い地域では森林が再生しやすく継続的な利用が可能ですが、乾燥地域、特に内陸の雨が少ない地域では、一度植生が破壊されると回復が難しい場合が多いです。

武田先生にとっての里山

-武田先生にとって里山とはどのような存在ですか
 里山は昔から人々の暮らしとともに存在してきた場所であり、そこに生息する多様な生物をできる限り残していきたいと考えています。

-現在取り組まれている里山保全活動について、今後の展望をお聞かせください
 今後も活動を継続できる体制を整えることが最も重要だと考えています。現在の会員や参加者は高齢化が進んでおり、企画や運営、方針決定を担える人材が不足しているため、継続性を確保するためには、次の世代への引き継ぎが不可欠です。長年活動してきた方々も年齢とともにリタイアしていくため、若い世代が新たに参加し、活動を支えてくれることを強く望んでいます。

-地域の人々にとって「里山」がどのような存在になってほしいと考えておられますか
 生物多様性は生態系の基盤であり、それが損なわれるとさまざまな場所で影響が出ます。人間も生態系の一部であるため、自然環境の変化は生活に直結します。特に農業では、屋外で栽培される野菜の多くが訪花昆虫ほうかこんちゅうによる受粉に依存しており、昆虫が減少すると収穫量が低下する可能性があります。こうした点から、地域の人々にも里山や生物多様性の重要性に関心を持ってほしいと考えています。

インタビューを終えて

 畜産学から植生学に進まれたのち、里山保全活動を始められたとのお話をうかがい、学問分野と環境活動とのつながりの広さを感じました。私は大学で都市計画やまちづくり、都市緑地について学んでいますが、人の営みについて学ぶ人間だからこそ、自然環境からの恩恵や人と自然との共生について改めて考えなければならないと気づきました。
 お話をうかがう中で、活動継続に向けて若い世代の参加が重要であるとおっしゃっていましたが、私自身、若い世代の環境問題・環境活動への無関心は課題であると感じています。まず自分の生活がどのように成り立っているかを知り、そこから自然環境や生物多様性を保全することの重要性について興味を持ち、知っていくことで、環境問題・環境活動を自分事として考えられるようになると思いました。

  • URLをコピーしました!
目次